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< 子育てのポイント >

― 知覚から知性への導き ―

知覚、認知、そして知性へ

私たちは、物に触れ、世界を見、音を聞き、味やにおいを感じて、それらの感覚をフル稼働して生活を営んでいます。

これらは私たちが生まれながらに備わっている「知覚」という能力です。

私たちはこの知覚という能力によって、人間を取り巻く環境(外界)から刺激を受け、その刺激が感覚情報として脳内へ送られ処理されます。

ある程度社会的生活を送ってきた大人の場合は、その社会的経験により脳内に蓄えられてきた情報(意味のネットワーク)と、新たに刺激された感覚情報が照合され、その感覚情報はひとまとまりの有意味な対象(経験)として認知(思考/理解/判断)されていきます。

この知覚という能力は、脳内の意味ネットワークを形成するための土台であり、認知活動の源泉であり、特に幼児にとっては「知性」の芽生えを支える非常に大切な機能と理解されます。

「知性」とは一般的に「物事を考え、理解し、判断する能力」として理解されていますが、この知覚から脳内の意味のネットワークを経由し、そして認知へと連携される一連の作用によって、知性が刺激、育成、洗練されていくのです。

この一連の作用と知性の関係については、生理的、医学的な説明が求められるかもしれませんが、ここでは、「知覚は知性の源泉」として理解し、そして知覚能力の向上が知性の育成と非常に密接な関係を有している、ということを押さえておきましょう。

知覚能力について

モンテッソーリは、知覚に関する働きを5つに分類しています。

  • 触る(tactile sense:触覚)
  • 見る(visual sense:視覚)
  • 聞く(auditory sense:聴覚
  • 嗅ぐ(olfactory sense:嗅覚)
  • 味わう(gustatory sense:味覚)

特に2-6歳までの年齢の子どもたちは感受性が強く、この年齢における感覚器官の刺激を通じて、敏感な知覚が形成されると言われています。

繰り返しになりますが、この知覚能力の発達が、認知能力の向上をもたらし、その認知能力が向上していけば、思考力、理解力、判断力が鍛えられ知性が洗練されていくのです。

認知能力について

ここでは、触る(触覚)、見る(視覚)という二つの知覚能力に焦点を当ててみましょう。

モンテッソーリはこの二つの知覚能力およびこの知覚を通じた認知能力を次のように4つのステージで分析しています。

  • ステージ1)ペアリング paring:ペアを作る。
    (同一な知覚対象を発見しペア(対)を作る能力)
  • ステージ2)グレーディングgrading:段階順に並べる
    (類似した知覚対象を程度によって段階的に順番を付ける能力)
  • ステージ3)ソーティングsorting:グループに分類する。
    (知覚対象の性質に応じてグループに分類する能力)
  • ステージ4)ディスクリミネーションdescrimination:知覚対象の特徴を認識し他の対象との関係性を分析、評価する。
    (特定の対象をより深く観察し、他の対象との相違性、類似性、特性を評価、他の対象との関係性を認識する能力)

ではもうすこし詳しくこの4つのステージを見ていきましょう。

<ペアリング>

ペアリングは、異なる性質のもののなかから、同じ性質の二つを発見し、そのペア(対)を作る能力で、基本は「差異性(differences)と同一性(sameness)」を知覚し、認識する能力です。

これに対し、同質のものが少しづく段階的に変化しているステージ2のグレーディングでは、「同一性(sameness)」に比べより高度な「類似性(similarities)」を認識する能力が必要とされます。

類似性とは、まったく同一ではないが共通する性質があると理解する能力で、同一性に比べ、より繊細で高次な能力とされています。

この点で、ペアリングはグレーディングほど高い認知能力を必要としません。

しかし、子どもには神秘的な能力が備わっているのです。

それが、感覚という能力です。

つまり知覚対象の細かい情報が「意識的」に認識されていなくとも、二つの対象の同一性は「感覚的」に判断され、ペア(対)を作ることができるのです。

ペアリングの能力は、感覚を通じた本能的な知性の芽生えとして理解しても良いのではないでしょうか。

<グレーディング>

グレーディングでは、「類似性(similarities)」の認知能力を要します。

一つ一つの知覚対象を細かく比較、検討し、段階的に並べていく能力です。

具体的には、短いものから徐々に長いものへ、幅の狭いものから徐々に幅の広いものへ、小さいものから徐々に大きなものへ順序を付けていく能力です。

またこの能力は、知覚対象の「形状」だけにとどまらず、その「性質」つまり物質の強度(柔らかさから硬さへ)の理解へとつながって行きます。

具体的な世界の認知から抽象的な世界への認知へ、より抽象性が高い思考という能力へ、認知の昇華ともいえる契機が表出するのがこのステージです。

グレーディングの能力は、ペアリングの感覚的認知から、意識的な認知へシフトする時点で現れてくる能力とされています。

言い換えれば、ペアリングにおいて知覚対象の性質の判断が「感覚的」であったのに対し、グレーディングの能力は「意識的」として理解され、感覚的判断から思考的判断へのシフトの時期がグレーディングのステージです。

この能力に基づいて、差異性と類似性に基づいた比較判断が可能となるのです。

「感覚的な同一性の判断」から「意図的な類似性の思考」へとシフトする時期、これがグレーディング期です。

<ソーティング>

ソーティングの能力は、同一性、類似性、差異性の認知能力によって、知覚対象の「特性(=特徴)」を認識する能力です。共通なもの、異なるもの、類似するものなどの特性を認識し、その特性にしたがって知覚対象をグループに分類していく能力です。

<ディスクリミネーション>

ディスクリミネーションは、一つの知覚対象の詳細をさらに細かく観察し、他の対象の性質との関係性を分析、評価、判断する能力です。

この能力によって、知覚対象の特性を認識し、他の対象との類似、相違の「程度」も把握できます。

まとめ

知覚に着目した知性の育成方法として、2-6歳までの子どもたちは知覚の感受性が強いという理由だけから、感覚器官をただ単に刺激すれば良い、と考えるのはあまりにも短絡的です。

お子さまの知覚レベル、そしてそれに連動する認知能力のレベルに相応しい訓練の方法、それを実践するための感覚教具の検討が十分になされないといけません。

子どもの感覚器官を刺激し、知覚を育成し、認知能力を効果的に向上させるヒントは、先のモンテッソーリの認知能力の4ステージ理論に隠されています。

リトミックスタジオ【Kirari】は、モンテッソーリの理論に基づき、「ペアリング」や「ソーティング」など、お子さまに適したモンテッソーリ教育を実践しています。

今回はご紹介できませんでしたが、モンテッソーリは知覚/認知能力を育成するための「感覚教具(Sensorial Materials)」の提案も行っています。

円柱ブロック(Cylinder blocks)、ピンクタワー(Pink tower)、茶色の階段(Broad stair)などはモンテッソーリの感覚教具として有名なものです。

こちらの「感覚教具」はまた改めてご紹介させていただきます。

最後に、知覚から知性へ、子どもの本来持つ能力を最大限引き出し、効果的に知性へと導くことがとても大切です。

このことを確認し、今回の記事を終わらせていただきます。


注)上記の記述に関して、リトミックスタジオ【Kirari】がクラスでより効果的に知育を実践するために独自にリサーチ・研究したものであり、あくまでも当スタジオ独自の解釈であること、また専門的な検証や実証的な研究の成果を反映させたものではないことをお断りしてしておきます。